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PX-320A 使用レポート

プレクスター(株)初の DVD/CD-R,RW コンボドライブ、PX-320A が5月9日に発売されました。いち早くご購入された方もいらっしゃるのではないでしょうか。(笑)
既に発売されている PX-W4012TA と同様に、このモデルも書き込み品位に関して、妥協無い作り込みを行ったと聞いています。
今回もメーカーさんから試作品をお借りし、同社が誇る高品位書き込み技術を、CD-DA の製作を通して検証しました。

●PX-320A が謳う、高品位書き込みのためのフィーチャー
基本的には、前作(PX-W4012TA)が持つフィーチャーをそのまま踏襲しています。
つまり、

  1. 電源回路を強化し、安定した電源供給を実現したこと。
  2. ブラックトレイの採用。クロストークの原因となるレーザーの乱反射を低減させている。
  3. 書き込み時のレーザー出力を+/-2段階の範囲で手動設定出来る、VariRec 機能を搭載。書き込み品位をユーザー自身で微調整することが可能。

これらに加え、PX-320A に関して特筆すべきは、等速書き込みモードを搭載していると言うことです。もちろん、VariRec は等速書き込みモードでも有効ですから、使い方次第では CD-DA の高品位書き込みに大きく寄与するフィーチャーと言えるでしょう。



PX-320A

しかしながら私には一つの懸念があります。それは、現行メディアの色素の状態です。
現行メディアは高速書き込み時のレーザーの反応を敏感にすべく、有機色素の含有比率が大変少なくなっています。シアニンメディアの多くはそれに加え、耐光剤を殆ど使っていない状況ではないでしょうか。 従って、低速書き込み時では適正な出力の調整が極めて難しくなっています。 メーカーの技術屋さんのお話でも、薄いセロファンの下にライターの火を通すようなものとおっしゃっており、ヘタに焼くとすぐにボロボロになってしまう。だから、いかに焼き過ぎず、巧く焼くかがポイントになるわけです。
つまり、線速と色素の物理的変化の関係は自ずと決まってくるから、変化量をコントロールするにはレーザーの出力の制御が鍵となる。しかし、出力制御の分解能はマイコン(又はIC)の分解能に依存するから、高速書き込み対応のために従来より敏感になった色素の反応を適正量に抑えるための出力制御は非常に難しくなる、という論法が成り立つのではないかということです。もちろん、色素は品位を決める一要因に過ぎませんが...。
今回のテストでは、以上のような疑問点も各メディアで確認しました。

この他の詳しい製品情報は、プレクスター(株)のウェブサイトをご覧になっていただければ幸いです。

プレクスター株式会社トップページ: http://www.plextor.co.jp/
PX-320A 製品情報: http://www.plextor.co.jp/products/px320a/index.html

●準備
前回の PX-W4012TA 同様、実際の書き込みテストは以下のように行いました。 あくまでも、一般ユーザーが普通に使う場合を想定し、外付けケースや電源ユニットにこだわるといった部分は、機を改めてご紹介したいと思います。

・設置
メインマシンに普通に内蔵。 但し、簡単なノイズ対策として、電源ラインをフェライトビーズに二重に通して取り付け。

・使用メディアについて
評価に使ったメディアは一般的な RICOH 80min と誘電 74TY 74min。
これに加え、怪しいメディア代表として、RiTEK の無名 OEM を敢えて使用(台湾メーカーでは、OEM 先に対する利害的要因で納入品のクオリティが変わるということがしばしばあるようなので、無名ブランドに対して RiTEK がどの程度のものを投入しているのか、興味があった)。

あと、1x 書き込みならやっぱり、コンシューマー用メディアでしょう!(^o^)ノ というわけで、1x 書き込みを音楽用 CD-R メディアでも評価。

・VariRec について
作動時の変化量が分かりやすいように、最大値(+/-2)にて評価。

●使用メディア

1.データ用 CD-R メディア

1-1 TRAXDATA
(RiTEK OEM) 80min 24x
1-2
RICOH 80min 20x
--- ---
1-3 太陽誘電 74TY 74min 32x
(ジャケットは 24x品流用)
 

2.音楽用 CD-R メディア

2-1 太陽誘電
A74CP 74min
2-2 三菱化学
CD-R AUDIO 74min
2-3 TDK
XA CD-R 74min
2-4 maxell
CD-R PRO-X 80min

※2-4 maxell CD-R PRO-X は、音楽用同等として評価しています。

●判断基準
オリジナルソース(リッピング元のプレスCD)に対する音質変化。

●総評:
PX-W4012TA に肉薄する高音質
なかなか興味深い結果が得られました。4x 書き込みでは素晴らしい書き込み品位を発揮し、大変満足できます。しかしながら、1x 書き込みでは、改めて現行の高速対応メディアによる書き込みの難しさを痛感しました。
1x 書き込みを試用した印象を一言で述べると、メディアの質が大きく影響をするということ。 質の低下が著しいデータ用の現行メディアでは、どれも満足できる音を聴かせてくれませんでした。
しかしその一方で、音楽用 CD-R メディアでは、なかなか高い品位の音を聴かせてくれました。
よく、データ用と音楽用は、基本的に同一であるといわれることが多いですが、まぁ基本は同じにせよ、音楽用は例えば、スタンパーの交換時期を早めに設定しているとか、若干調合をアレンジしている等の可能性はありそうです。
1x 書き込みは音楽用メディアで
いずれにしても音質の面で限定すれば、PX-320A の最大のライバルは PX-W4012TA であることに疑いの余地はありません。
現行のデータ用メディアでは、4x と VariRec を駆使することで、PX-W4012TA に肉薄するクォリティを得られます。
その一方で、よりマニアックに、よりシビアに音質を追求するなら、1x と VariRec を駆使した緻密な書き込みを楽しむ、という使い方なると思います。実際、1x モードで品良く書き込めば、音楽用誘電を使ったときのように PX-W4012TA を凌駕する音質(後述)を得られるのです。

●メディア毎の音質

1.データ用 CD-R メディア

1-1 RiTEK 80min 24x
4x 書き込み:
最安価な部類のメディアにも関わらず好印象。比較的音色のバランスも良く、聞きやすいが、取り立てて素晴らしいわけでもない。80min メディアなので、分解能がやや劣るのは仕方ないが、それでも全く遜色ないレベル。 VariRec +2 では、ややドンシャリ気味になるものの、バランスは破綻しない。 VariRec -2 では低域が影をひそめ、渇いた印象となる。

1x 書き込み:
少々問題が発生した。 曲の中にパチッ、パチッと時折小さなノイズが入っている。
また、全体的に渇ききった音色となり、フルートがガサつく(ノイズっぽい)。
VariRec を試すまでも無く、ノイズの発生により、評価中断。
バルク売りの激安メディアは、所詮この程度か。(^^;


1-2 RICOH 80min 20x
4x 書き込み:
音色の傾向は 1-1 RiTEK と似ているが、分解能はやや上。最初からドンシャリ気味なので、VariRed +2 だと、ややくどい印象。VariRec はマイナス(-)方向で作動させるとバランスが良くなると思われる。但し、他のメディアよりも VariRec の効果は軽い傾向がある。

1x 書き込み:
1-1 の RiTEK で見られたノイズは見られなかった。やはり、品質の差かもしれない。
音色は 4x よりも分解能の向上は感じるものの、RiTEK 同様に乾いた印象は拭いきれない。


1-3 誘電 74TY 74min 32x
4x 書き込み:
生き生きとしている。80min メディアとはやはり、一線を画す鮮度を発揮する。
音色もバランスが取れていて、誘電ならではの癖の無さと聞きやすさは秀逸。(というのは、単に今回購入したものが当たりロットだっただけかもしれないが。(^^; )
VariRec +2 では、分解能と鮮度はそのままに、重厚さがプラスされ、大変品位が高い。

1x 書き込み:
分解能と鮮度は 4x 書き込み時とほぼ同様の傾向を見せるが、やはり厚みが取れ、若干渇いた印象になってしまう。 聞きやすいのだが、迫力が失われる。

2.音楽用 CD-R メディア(すべて 1x 書き込み)

2-1 誘電 74min
驚いた。データ用で好印象だった 4x 書き込みの 74TY より、更に一枚ベールを剥がしたような透明感かつ、フラットでバランスが取れている音。 分解能も申し分なく、質感も秀逸。
1x モードは、ここにきて初めて本領を発揮している感がある。 若干厚みを与えるため、VariRec での調整を +1 くらいにするとベストだと思う。

2-2 三菱 74min(アゾ色素、記録面は深い青色)
分解能も比較的優れており、音色も突出する帯域が無く、フラットで聴き易いのだが、全体的に荒さというか、ざらつきがある。 以前データ用の AZO を試した時のざらつきよりはおとなしいものの、これは AZO 色素の特徴かも知れない。いずれにしても、AZO はあまり DA 向きではない印象を常に感じる。

2-3 TDK 74min
傾向的には誘電と似ているのだが、誘電よりもやや渇いた感じの音。
VariRec +1 程度でバランスは改善されると思われるが、分解能や質感の面では誘電に一歩譲る。

2-4 maxell Pro-X 80min
音楽用が高価なので、データ用で代用(ほとんど同じなので)。
音色は実にフラットで聴き易いが、ソフトな傾向が強く、分解能は悪い。
但し、購入したものは 12倍速対応品の売れ残り。 長期に渡って店頭に晒されていたので、保存環境が品質に悪影響を与えていた可能性がある。

注意:これらの音質評価は、COLT-T が普通に購入したメディアを客観的に評価したものですが、幾度となく申し上げているように、メディアのバラツキや書き込み環境によって、音質は変化します。
あくまでも参考までにとどめ、最終的には皆さん自身が各々ご確認下さい。

●PX-W4012TA との比較
4x 書き込みの音色と品位は両者共、非常に拮抗しており、正直言ってどちらが優れているかという判断は非常に難しく、選択は実に悩ましいと言えます。 CD-DA の高品位書き込みという用途であれば、どちらを選んでも全く遜色ないでしょう。
但し、メディアを選ばずに、そつなくこなすという印象は、PX-W4012TA の方に軍配が上がるように思いました。しかしながら PX-320A との差はごく僅かであるし、"1x VariRec" を上手く使うと、大化けする可能性を秘めている PX-320A のポテンシャルは特筆に値します。

●まとめ
高品位 CD-DA 作成における PX-320A の VariRec は、4x モードは現行のデータ用メディア使用時、1x モードは音楽用メディアで、という使い方が効果的な方法の一つと言えそうです。とりわけ 1x 書き込みは、メディアの質と VariRec、及び電源等、それぞれの特性が複雑に絡み合い、且つそれらの影響が大変敏感に音に反映されるので、これからの 1x 書き込みは、今以上の試行錯誤とユーザー各々のノウハウが試されるところとなるでしょう。
その世界は実に奥深く、好奇心を刺激します。今以上に皆さんの多様な Tips を生み出す可能性を感じます。(笑)

1x + VariRec + 音楽用 CD-R メディア の組み合わせは、今後の高品位書き込みのトレンドとして、当サイトから普及させたいと思うようになってきました。(笑) 是非「ハマリモノ BBS」 にて、皆さんの Tips をご紹介下さい。また、HiFi CD-R Gallery への力作出品も楽しみにしています。(^o^)ノ

 

2002年5月14日 (C) COLT-T
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