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PX-W4012TU 使用レポート

プレクスター株式会社から、40倍速書き込み対応ドライブ PX-W4012TA の外付けタイプが発売されました。
基本構成は PC とのインターフェイスに USB1.1/2.0 を採用しており、一見すると、ごく一般的な ATAPI CD-R/RW ドライブを使った外付け CD-R/RW ユニットの一つと見過ごしてしまいそうですが、よく眺めてみると、巷に流通しているあまたの USB1.1/2.0 インターフェイス内蔵の外付け CD-R/RW ユニットとは一線を画す、同社ならではの書き込み品位に対するこだわりを感じる製品に仕上がっています。
メーカーさん曰く、「外付型で音質が良くなる理由は電源や取付を外付することで PC 本体のノイズ等のアイソレーションが取れることもさることながら ATAPI のようなデータパラ転送よりシリアル転送(USB/1394)の方が小さいながらもデータバッファ効果により音質が良好になるようです。」とのことで、当サイトが追求するテーマと同じ指向性を感じ、私こと COLT-T にとっては実に嬉しいコメントです。(笑)

●PX-W4012TU の特徴
ドライブ本体は PX-W4012TA と同じですから、PowerRec-II や BURN-Proof など、安定した書き込みをサポートする機能はもちろん、VariRec もしっかりと搭載しています。(4x 書き込み時のみ)

PX-W4012TU ならではの特徴としては、内蔵型である PX-W4012TA では実現できなかった、最高の書き込み速度 40x による CD-DA の書き込みが可能となっています。(PX-W4012TA では、CD-DA の書き込み速度は 24x までに制限されていた。)
これが実現できた背景には、「USBブリッジにより一部MBと組み合わせた時発生するノイズループが切れる為可能になりました。(プレクスター社)」と言うことらしいです。
これはやはり、PC へ内蔵する場合は、多かれ少なかれ各デバイスから発せられるノイズの影響を無視出来ないのだ、ということの現れだと言えるでしょう。



PX-W4012TU

特筆すべき特徴をもう一つ。
本体ボディは驚くべきことに、アルミ押し出しのモノコック構造という、堅牢性と熱伝導性に優れた、高品位書き込みにとって理想的なものを採用しているのです。
このモデルの発表当初、プレスリリースをちらっと見たときに、モノコック構造のケースを採用と書いてあったので、板金のプレスで剛性を高めているのだと勝手に想像していたのですが、まさかコストの高いアルミ押し出しを、外装ケースに使っているとは。 PCの周辺機器で、外装ケースにここまで手を掛けているものは、今まで見たことがありません。(^^; これを見るだけでも、同社の気合いの入れ具合が半端なものではないということが分かります。

※PX-W4012TU のファームウェアは、内蔵タイプの PX-W4012TA と互換性は無いので、PX-W4012TA には適用出来ないとのことです。今後、PX-W4012TU の新ファームウェアが公開されるかも知れませんが、メーカーさん曰く、「内蔵タイプの PX-W4012TA に PX-W4012TU のファームウェアを使わないでください」とのことです。(その逆をする人はいないと思いますが...。) いずれにしても、実際に公開された場合は、その時のメーカーの指示に従うのが宜しいでしょう。

この他の詳しい製品情報は、プレクスター(株)のウェブサイトをご覧になっていただければ幸いです。

プレクスター株式会社トップページ: http://www.plextor.co.jp/
PX-W4012TU の製品紹介ページ: http://www.plextor.co.jp/products/pxw4012tu/index.html

それではそろそろ、試聴に入りましょう。

●メディアの準備
今回使用したメディアは、以下の通りです。
データ用と音楽用、それぞれ一般的に売られているものを使いました。
あと、やっぱり昔の良質メディアを使った場合の音質も知りたいということで、TDK の CD-R63PWS と太陽誘電 CDR-74ZY PM 盤 8倍速 も参加させました。
本当は、PX-W4012TA レポート時と同じメディアを使いたかったのですが、ほとんどが調達の都合で入手できませんでした。仕方ないので、PX-320A レポート時のメディアを使うことにしたのですが、実際 PX-W4012TA と PX-320A の音質は酷似しているので、評価の大部分は PX-W4012TA との比較として認識していただいて結構だと思っています。

なお、書き込み速度はいずれも 4x です。

●使用メディア

1.データ用 CD-R メディア

1-1 TRAXDATA
(RiTEK OEM) 80min 24x
1-2
PHILIPS CD-R80 80min 24x
---
1-3 太陽誘電 74TY 74min 32x
(ジャケットは 24x品流用)
1-4
太陽誘電 74ZY 74min 8x 対応品
1-5
TDK CD-R63PWS 63min
 

2.音楽用 CD-R メディア

2-1 太陽誘電
A74CP 74min
2-2 三菱化学
CD-R AUDIO Phono-R 74min
2-3 TDK
XA CD-R 74min
2-4 maxell
CD-R PRO-X 80min

※2-4 maxell CD-R PRO-X は、音楽用同等として評価しています。

●判断基準
オリジナルソース(リッピング元のプレスCD)に対する音質変化。

●総評:
外付けの効果はてきめんです。実によく、メディアの能力を引き出しています。
全てのメディアで分解能と質感が向上しており、PX-W4012TA の時のレポートでは触れていませんが、PX-W4012TA で焼いて印象が悪かった、外れロットの 24x 対応 74TY が、かなり好印象な音で書き込まれていました。
前述したように、今回使ったメディアは PX-320A のレポートで使用したものが多く含まれていますが、そのどれをとっても PX-320A を PC に内蔵した時より確実に音が違います。密度が高いのです。

●メディア毎の音質

1.データ用 CD-R メディア

1-1 RiTEK 80min 24x
元々印象は悪くないが、PX-320A で焼いたときよりも、更に分解能と質感が向上している。
ドンシャリ傾向は相変わらずだが、普通に聴くぶんには全く問題ない。

1-2 PHILIPS CD-R80 80min 24x
一聴してハッ!とした。非常にクリアで澄んだ音色が心地よい。80min メディアでありながら質感も十分で、これは今まで使った 80min メディアの中でも、最高クラスだと言える。全く意外だった。今のうちに買いだめしておいて損はないと思う。(笑)

1-3 太陽誘電 74TY 74min 24x
今回使ったものは、実は PX-W4012TA をレポートしたときに購入し、音質が悪い「外れロット」だったのでレポートには使わず、それ以降放っぽっていたもの。しかし、淡い期待を抱き、今回焼いて試聴してみたところ、PX-W4012TA で焼いたときと比較して、明らかに分解能と質感が向上していた。質の悪いメディアでも、かなりのレベルまで能力を引き出すことが出来るようだ。

1-4 太陽誘電 旧74ZY 8x 対応品
いつもながらこの優秀メディア、優れた分解能とフラットな音色は申し分ない。それに加え PX-W4012TU では、質感と臨場感が加味され、実にリアルな音色。 古いメディアでも、十分に能力を引き出している。この辺は PowerRec-II に依るところが大きいのかも知れない。

1-5 TDK CD-R63PWS 63min 6x 対応品
今回の 63min メディアは、TDK 63min のプリンタブルホワイト盤で、手持ちのストックの中で音質がイマイチのロットの部類に入るもの。以前 COLT921S-PR (^^; で焼いたものと同様に、分解能は 63min メディアとしては不十分なものの、63min メディア特有の鮮度の高さと弾むような躍動感と言う点では COLT921S-PR よりも良好な結果を得ることが出来た。

2.音楽用 CD-R メディア

2-1 誘電 74min
PX-320A のレポートでその真価の片鱗を見せたこのメディアだが、今回は更に上のクォリティを発揮した。 正直言って、8倍速の旧誘電同等か、それ以上の音質であると言える。
恐らく、現在入手できる CD-R メディアのうちで最高ランクと言っても過言ではないと思う。何しろ癖が無くて、音色はあくまでもフラット。ドライブの能力がそのまま音に反映する。

2-2 三菱 Phono-R 74min(アゾ色素、記録面は深い青色)
レーベル面が大のお気に入り。
今後は是非、中心部分が、プリンタブル仕様になっているものを発売して欲しい。(笑)
一方、音質はやはり、アゾ特有の癖がまとわりつく。 確かに、全域フラットでアナログチックな不思議なぬくもりを感じる、親しみやすい音色であることは、大変好印象なのだが、いかんせん輪郭が荒い。チリチリとした成分が常につきまとい、音の品位を落としている。
ゼネラル・オーディオで聴くぶんには、あまり気にならないと思われるが、機器のグレードが上がるにつれ、ざらつきが目立つようになるだろう。このざらつき感が払拭されない限り、HiFi ソースの記録にはちと辛いかもしれない。
ただし、この不思議な音色は、昔の Fe-Cr テープのような独特のぬくもりがあって、聴いているうちに次第に惹かれていく感覚を覚える。見方を変えれば、ゼネラル・オーディオならば、大変魅力的な音を出すメディアと言えると思う。そう言った使い分けも良い。

2-3 TDK 74min
元々は比較的平凡な印象のメディアであるが、このメディアもまた、PX-320A の時よりも分解能と質感が向上している。 ただ、絶対的な分解能と質感は高いとは言えず、音質にこだわる用途にはあまり向いていない。

2-4 maxell Pro-X 80min
PX-320A ではイマイチだったこのメディアだが、今回は飛躍的に音質が向上している。
雰囲気的には 1-2 Philips 80min の音色に、中低域の重厚さを加えた印象で、バランスも良く実に聴きやすい。

注意:これらの音質評価は、COLT-T が普通に購入したメディアを客観的に評価したものですが、幾度となく申し上げているように、メディアのバラツキや書き込み環境によって、音質は変化します。
あくまでも参考までにとどめ、最終的には皆さん自身が各々ご確認下さい。

●まとめ
内蔵タイプの PX-W4012TA と比較すると、最初から外付けユニットとして設計された PX-W4012TU の優位性は明らかです。ボディもスタイリッシュです。
確かに、使用しているドライブは基本的に同じものですから、焼き上がった CD-DA の音色は似通っていますが、やはり外付けユニットの方が、分解能と質感の向上が顕著に現れるのです。これは外付けしたことによる、独立かつ安定した電源供給と、PC 内で発せられる様々なノイズからの遮断が、書き込み品位の差となって現れているからに他なりません。
試しに、PX-W4012TA を、ある常連さんからいただいた SUN のケースのインターフェイス部分を改造した外付けケースに組み込み、同条件で焼いてみたところ、PX-W4012TU に肉薄する品位の書き込みを実現できました。
ケースの改造は、一般の方には敷居が高いものです。ですから、最初から質の高い外付けユニットとして発売されている PX-W4012TU は、自分で改造せずとも手軽に高品位な書き込みを実現できる一手段として、大変有効であると思います。

 

ハミダシレポート その1
PX-W4012TU を解剖する

本文中にも書きましたが、この製品の外装ケースはアルミ押し出しのモノコック構造で出来ており、一目見て堅牢性が十分であることが分かります。 予想通り放熱性も非常に高く、いまパソコンラックのモニター真上の棚においてありますが、電源が入っていないにもかかわらず、モニターの熱により暖められた棚板の熱を吸収し、ケースがほんのりと暖かくなっているほどです。この優れたケースの中身はどうなっているのか、ちょっと中を覗いてみましょう。 また、電源周りの構造も興味津々です。
注意:分解すると、期間内であってもメーカー保証は無効になります。 修理の場合は有償になりますので、分解は自己責任でお願いします。自信のない方は、やらないで下さい。


ドライブ本体
(取り出すのに苦労した)


天面から見た PX-W4012TU
ヘアラインが美しい

背面パネルの2つのネジを外し、手前に引くとケースからドライブがベゼルごと抜き取れます。
エッジが鋭いので、手を切らないように注意して下さい。

しかしまぁ...
アルミ押し出しモノコック構造
気合いが入ってます (^^;

 

取り出した内部ユニット

意外にコンパクトに収まっています。
電源部分のほとんどが AC アダプタによる外部装置となっているため、セット本体は僅かに奥行きが増える程度で済んでいます。

ドライブ自体の発熱は比較的少ないため、ファンは付いていません。これは、SCSI モデルが主流だった頃と比べて、格段の進歩と言えるでしょう。

電源周り



コンパクトなインターフェイス変換&レギュレータ回路

本体側には AC アダプタから供給された DC12V  から DC5V を作りだすためのレギュレータ回路と USB インターフェイスの変換回路が、一枚の PCB に実装されていました。

 

下の写真の中で、四角いチップはインターフェイス変換用チップ。その右側にある幾つかの丸い部品はレギュレータ(基板裏側に実装)周辺のケミコンとコイルです。レギュレータは、SHARP の 1CY1032(たぶん)が使われていました。 これで作られる 5V と直入力される 12V の容量バランスが気になるところです。

AC アダプタの差込口直後のケーブルに、フェライトビーズが巻かれていますね。



やはり気になるのは、電源の容量。AC アダプタの定格は 12V/3A となっており、この電源から駆動系の 12V と制御系の 5V を供給するのですが、PX-W4012T 本体の消費電流は 12V/2A(MAX), 5V/1.5A(MAX) なので、あの書き込み品位の優秀さを考えると、意外なほど小さく感じます。 しかしながら、メーカーの設計者が十分に検討を重ねたもので、必要十分な性能を出せているのなら、それに越したことはないでしょう。

プレクスター社へ本件を問い合わせたところ、次のような回答をいただきました。
技術担当の方からのご説明を要約すると、5V は予想通り、 AC アダプタの 12V/3A を元に、レギュレータ回路を通すことで生成されるとのこと。 入力が AC アダプタからの単一の 12V であることから、5V と 12V をそれぞれ引っ張り合うイメージとなります。しかし、そこはやはり十分な検証を行っているそうで、実使用での消費電流 12V/2A(MAX), 5V/1.5A は、それぞれが引っ張り合っても影響の出ない回路構成にしているとのこと。
まぁ、回路設計としては、当然なことですが、メーカー側から明確な回答をいただくことで、ユーザーとしては安心して使うことが出来ますね。

 


ハミダシレポート その2
40x で CD-DA を焼いてみる

内蔵タイプ PX-W4012TA では 24x 止まりであった CD-DA の書き込み速度ですが、レポート本文中に記述したように PX-W4012TU では 24x を超える書き込み速度 32x, 40x が選択できるようになっています。

そこで、4x 〜 40x までの速度で各々 CD-DA を焼き、書き込み速度の変化によって、音質がどのように変化するかを試してみました。

使用したメディアは、入手が容易な太陽誘電の現行品です。

That's CDR-80TY

書き込み速度は、4x, 8x, 16x 24x, 32x, 40x の全部で6通りです。

結果
基本となる 4x での音質ですが、80min メディアとしては平均的な音質です。 分解能はやや低めですが、フラットで誘電らしい癖のない音質。
今回のテストでは、この音質が保てるのは 8x までと言って良いでしょう。
書き込み速度を 16x にまで速めると、まず分解能が落ちてきます。次に、24x に達すると、今度は低域が薄くなり、キンキンした音質に変わってきます。 高域のレベルは変わらないものの、分解能は確実に低下します。
32x 以上では、高域のカスカスした、乾いた印象が更に強調され、再生装置がワンランク落ちたような、品位のない音に変化していきます。

但し、16x 以上でもラジカセやカーオーディオと言った、厳密な再生音のバランスを気にしない用途であれば、全然問題ありません。 むしろ、BGM や軽く聴くような用途であれば、高速でガーッと書き込めるメリットは十分有効です。 要は、用途によって使い方を変えれば良いわけですね。

 

 

2002年7月6日 (C) COLT-T
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