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零戦 機体色に関する"素人なりの"一考察 (タミヤ
1/32 零戦 21型 発売記念)
零戦の機体色に関しては、以前から諸説入り乱れているが、零戦の灰白色をして一部の人たちの間で、「飴色」と呼ばれるようになったのは何故であろうか。雑誌や Web 上の活字で見るたびに強い違和感を感じる。
一般的に「飴色」とは黄褐色の透明な色(≒オレンジ掛かったクリアイエロー)であるし、どんな辞書で調べても、同様な色を指している。水飴やベッコウ飴の色をイメージすると良いだろう。
個人的な見解であるが、このような色表現の誤用のきっかけになったのは、かなり以前に、雑誌(確かモデルアート、号数失念!)に当時の資料の引用文が書かれていて、零戦の灰白色を「明るい灰色に僅かに飴色がかったような色」というような表現をしていたのが発端じゃないかと推測している。この引用に基づくと、「飴色」は零戦の機体色を構成する単なる調色要素の一色に過ぎないのであるが、「飴色」という言葉に読み手が何らかの強い印象を感じたためか、いつの間にかその言葉だけが切り取られ、あたかも零戦(海軍)の灰白色の名称そのものであるかのように誤用されて、その後「飴色」という呼び方が一人歩きしてしまったのではないかと考えている。
しかし、これほど違和感のある呼び方が、何故ここまで当たり前のようにまかり通ってしまったのだろうか。
私自身は、それほど戦史にも旧海軍の規格にも詳しくないし、そういった調べようが無い情報をあれこれ詮索すること自体、あまり興味も無いので、自分の無知ゆえの疑問に過ぎないのかもしれない。また、1/72 零戦のページでも書いているが、実際の戦時下では、米軍のように物資が豊富ではなかったから、正規の塗料が不足して、手元にある塗料を混ぜて代用したケースもあるだろう。それを見た当時の兵士から得た証言を元にしたところで、正規の色味は分からないのだ。
だが、いろいろな情報から判断して、明るめの灰色系であることはほぼ間違いないだろう。だから、幾らなんでも「飴色」という呼び方は、客観的におかしいものはおかしいのである。機動戦士Zガンダムに登場する「百式」というモビルスーツのような色の零戦が飛んでいたとは到底思えない。(笑)個人的には零戦の機体色は「明灰白色」という呼び方が一番しっくりくる。
以上、かなり自分の見解に偏った文章をご覧いただき、嫌な印象を抱いてしまった方がいらっしゃったら、率直にお詫びしたい。 まぁ、あくまでも素人の個人的な見解なのでご容赦いただきたい。 また、明らかな誤りがありましたら、こちらまでご指摘いただけたら幸いです。
ちなみに今回のタミヤが 1/32
零戦21型と同時に発売した新色は、まさに明灰色に僅かなクリアイエローが混ざったような色をしているような印象なので、前述の当時の資料の記述が裏付けられていると思った。従ってこれが現時点での解釈で、一番真実に近い色ではないだろうか。
ご意見、ご感想はこちらまで。
2006年8月18日
2007年2月4日 加筆
先日、ガイアノーツより当時の公式の資料に基づく、正式な色調の零戦機体色を再現した塗料が発売された。
「灰緑色(かいりょくしょく)」と「緑色(みどりいろ)」である。
ガイアノーツの発表によると、当時の「海軍航空機用塗料色別標準」という資料を発見し、60年の時を超えて遂に正しい零戦の機体色を突き止めた、と言うことらしい。
その資料の出所について、立ち読みした模型誌(誌名・号数失念!)に掲載していた記事で、公式の資料を所蔵しているところで、ごく普通に見つかったといった趣旨のことが記述されていた。
で、ここからは主観なのだが、あまたの零戦色を論じていた所謂専門家や評論家と言われている諸氏は、今まで何十年も何をやっていたのか?ということ。 戦時中の案件を調査するのは、まず最初に公式資料の調査ありきなのは基本中の基本じゃなかろうか。 いろんな人の手垢にまみれ、色褪せたカラーチップだの、長年風雨にさらされた機体の破片、当時の兵士の不確かな記憶の断片をつなぎ合わせて、ようやく声高らかに叫んだ挙句の飴色騒動。功名心に駆られた故の世迷言か。人騒がせにも程があると言うものである。 曲がりなりにも長年研究している専門家・評論家の調査能力が、創業間もない中小企業の調査能力にも劣ると言うことか、と正直がっかりした。